<4.食物アレルギーはどうして増えているの?>
—食生活を中心とする環境の変化—
日本人1人が1年間に消費するおもな食品について、農林水産省から統計が出されています。
戦後から昭和、平成にかけて最も消費が増加しているのが牛乳・乳製品です。
小麦も増加しています。
魚介類はえびなどを中心に増加、また肉類・油脂類も増加しています。
消費が多いということは生活環境にこれらの食材が多いということでもあります。
また加工食品やインスタント食品などに多くの食材が使用され、アレルゲン食物を口にする機会も多くなっています。
こうした日常食生活の変化が、最近の食物アレルギー増加に関係しているとされています。
——IgE抗体が作られる「経皮」感作—
私たちの体は口から食べ物を取り込んで、腸の粘膜を通して栄養として吸収します。
食べ物が私たちの体にとって異物でありながら排除されないのは、腸管にもともと備わった「免疫寛容」というシステムのおかげだと考えられています。
食物アレルギーは、腸管のその免疫寛容が機能せず、本来栄養となる食物たんぱくに対して過剰に反応してしまう疾患です。口から取り入れた食物によってIgE抗体が作られることを「経口感作」といいます。
しかし現在は、皮膚や気道からも食物たんぱくの一部が入ってくることが明らかになっています。これを「経皮感作」「経気道感作」といいます。とくに皮膚からの食物感作はIgE抗体をより作りやすくする傾向があり、最近は、食物アレルギー発症の機序として、「経皮」感作が重要であるとされています。
湿疹などで皮膚のバリア機能が低下している乳児では、皮膚に食物アレルゲンが接触して感作が起こり、アレルゲン食物を食べると食物アレルギーの症状が起こることになります。
ピーナッツアレルギーの発症と食生活環境中のピーナッツ量(家庭での購入量)を検討した報告がありました。ピーナッツアレルギーの発症は必ずしも母・子のピーナッツの「摂取量」とは関連せず、ピーナッツバターの「購入量」と最も関連しているとしています。すなわち、アレルゲン食物を食べていなくとも、生活環境に食物アレルゲンが多くあることで、経皮感作により、食物アレルギーを発症させていると考えられています。
アレルギーの増加と関係のある環境の変化は、食生活に限りません。自然志向からスキンケア外用剤の原料に小麦や植物性油脂(ピーナッツ、ナッツ類、ごま)、大豆や豆乳などのアレルゲン食物(アレルギーの原因になる食物)が利用され、経皮感作を増加させている可能性があります。
—過度に衛生的な環境も一因に—
私たちの体には、外界の病原体などから自らを守るための免疫機能が発達しています。とくに細菌の侵入に対する免疫は、適度な細菌刺激でその機能が維持されています。
ところが、抗生剤の多用やあまりに清潔な環境によって感染刺激に対する機能が必要とされなくなると、逆にアレルギーを引き起こしやすくなるのです。
このように、過度に衛生的な環境が食物アレルギーを引き起こすという仮説を「衛生仮説」といい、注目されています。