食物アレルギー ひやりはっと (食物アレルギーひやりはっと事例集2014より)

症状を誘発するアレルゲン量に関するひやりはっと

事例1:これくらいは大丈夫だよ、きっと・・・
年齢・性別:1歳女児
原因   :カステラ
症状   :全身蕁麻疹
経過   :それまでに3回、卵の二次製品を食べて症状が出たことがあったため 園には食物アレルギーの話しはしてありました。
しかし、幼稚園のおやつの時間に先生が「これくらいは大丈夫だよ」とカステラを食べさせたところ5分くらいで全身蕁麻疹が見られ、抗ヒスタミン薬の内服をしてから病院を受信しました。
解説   :誘発する摂取量は、個人個人によって全く異なります。
対策   :自己判断で安全に摂取できる量を決めることは避けましょう。医師に相談してください。

事例2:コップに残っていたミルクで大変なことに・・・
年齢・性別:5歳 女児
原因   :牛乳
症状   :蕁麻疹
経過   :園のおやつの時に 他の子どもが牛乳を入れて飲んだコップを洗ってから うちの子のためにお茶を入れてくれたのですが 飲んだ後に蕁麻疹が出ました。
手持ちの抗ヒスタミン薬の内服で落ち着きました
解説   :コップに牛乳が残っていたためと思います。園の先生が極少量のミルクでもトラブルが起きることを十分認識しておらず、洗浄が不十分であったためと考えられます。
対策   :間違って飲まないようにするために、食物アレルギー児には専用の食器を使うこと

事例3:卵抜きの材料で調理していたのに・・・
年齢・性別:4歳 男児
原因   :天ぷらの衣についた卵
症状   :アナフィラキシー
経過   :いつも除去食を出してくれているホテルで、天ぷらを食べた時に蕁麻疹、腹痛、冷や汗が出てぐったりしました。すぐ手持ちのステロイド薬を飲ませ、病院を受診した時には症状は落ち着いていました。
その後、ホテルに確認したところ 天ぷらの衣に卵が混ざったおそれがあることを知りました。
解説   :卵抜きの材料で料理はされていたのですが、うっかり他の料理で使用した調理箸を使用したため天ぷらの衣に微量の卵が混入したものと考えられます。
対策   :このようなわずかな量でもアレルギーを起こす患者さんがいます。ごく微量のアレルゲンで症状を惹起するかどうか知っておくことは役に立ちます。
特に微量でアナフィラキシーのような重篤な症状を起こしたことのある患者さんは注意が必要です。

事例4:ジュースのノズルから牛乳が混入
年齢・性別:3歳 男児
原因   :ジュースに混入した微量のミルク
症状   :じんましん
経過   :注入口が共通タイプの自動販売機でジュースを買って飲んだら 口の周囲からじんましんが出てきました。慌てて緊急用の抗ヒスタミン薬を飲ませました。
解説   :ノズルが共通タイプの自動販売機では、前に購入されたコーヒーのミルクがノズルに残っている場合があります。この例では、ノズルに残った微量のミルクがジュースに混じってしまったことで症状が出たと思われます。
対策   :患者=ノズルが共通タイプでは使わない  企業=自動販売機に「乳成分が混入する恐れがありますす」という表示をする。

事例5:パン屋さんのパンは安全と思ったのに・・・
年齢・性別:1歳 男児
原因   :米粉のパン
症状   :アナフィラキシーショック
経過   :パン屋さんで米粉パンを購入。卵と牛乳も除去中なので店員さんに確認すると 「卵も牛乳もはいっていません」とのこと。翌朝、こどもの朝ごはんとしてそのパンを食べさせたら 全身にじんましん、呼吸困難が出現し、アナフィラキシーショックで入院しました。
解説   :実はこのパンには、脱脂粉乳が使われていました。店員さんには脱脂粉乳が乳製品の認識がありませんで 店員さんの知識不足が原因でした。
対策   :基本的に店頭販売はアレルゲンの表示義務がありません。店員は原材料に関する知識が不正確なことが多いため 責任者に確認した方がよいです。
店側は、原材料を聞かれた場合でもわからない場合は はっきりと「わかりません」と答えるべきです。

事例6:先生が「残さないように」と言ったため・・・
年齢・性別:10歳 男児
原因   :給食にでたキウイフルーツ
症状   :全身じんましん、咳、喘鳴
経過   :本人はキウイフルーツを食べて喘鳴が出たことがあったため 医師からも食べないように指示されていました。しかし、先生から給食にだされたものは残さないようにと言われたため、無理に食べたところ全身じんましん、咳、喘鳴が出現しました。学校から救急搬送され 適切な処置の後落ち着きました。
解説   :保護者からの食物除去依頼書の提出も医師からの指示書もなく 学校からの聞き取りもなかったことにより事故が起きました。
対策   :専門医による正しい食物アレルギーの診断がくだった場合は、医師の指示書とともに 給食対応の依頼書を出すのが良いでしょう。学校では、担任の先生、養護の先生、栄養士さんとの話し合いの場をつくってもらうようにしてください。医師からの園・学校生活管理指導表(食物アレルギー)も有用です。

事例7:栄養教諭が原因アレルゲンを含むメニューにマークするのを忘れたために・・・
年齢・性別:7歳 男児
原因   :微量の牛乳を含む米粉パン
症状   :アナフィラキシー
経過   :メニューごとではなく、メニュー全体をまとめて原材料を記載した献立表を使う学校です。栄養教諭が、原因アレルゲンを含む料理があると サインペンでマークをつけて保護者に伝える方式でした。牛乳を含む米粉パンでしたが、栄養教諭がチェックを忘れてしまいました。
解説   :2つ問題があります。1つは、栄養教諭が原因アレルゲンである牛乳が含まれるメニューである米粉パンにマークを忘れたこと。しかしヒューマンエラーが起きうると考え起きても2重チェックができる献立表とチェック体制を作るべき。2つ目は、メニュー全体の原材料をまとめて記載した献立表だと マーク忘れがあると担任や保護者が見ても米粉パンに牛乳が含まれているかわからない。
対策   :メニュー(料理)ごとに原材料を記載する。そうすればだれが見ても原因アレルゲンがどのメニューに入っているか判断でき、園・学校側、保護者によって二重三重のチェックができる。栄養教諭がマークを間違えても 担任や保護者が気づくことができる。

園、学校、施設で 食物アレルギー知識不足による事例

事例8:園でおやつもおかわりを間違えて配膳
年齢・性別:3歳女児
原因   :園で出された卵入りクッキー
症状   :蕁麻疹
経過   :4月の慣れないバタバタしている時期に 卵アレルギーの園児がおやつのおかわりをしたところ 先生が間違えて食べていけない卵入りのおやつをあげてしまい それを食べたところ蕁麻疹が出ました。
解説   :先生は新任初日で、仕事に慣れていませんでした。そのため、食物アレルギーに十分注意を払わずあげてしまったそうです。また、おかわりということで 注意がおろそかになっていた可能性もあります。
対策   :先生が保育になれていない場合、特に食事の時間は先生を増やし、食物アレルギーの園児に注意を払う必要があります。また、新任の先生にも事前に食物アレルギーの知識をつけてもらうことが大事です。

事例9:えっ!それが原因だったの?
年齢・性別:5歳女児
原因   :牛乳石鹸
症状   :手洗い後の手の発赤
経過   :園で手洗いの後、手首から指にかけてときどき赤くなることがありました。原因はわからないまま同じ症状を繰り返していましたが、ある日母が園に問い合わせると 「せっけんは各家庭から持ち寄ってもらい、皆で使っている銘柄の指定はしていない」と言われました。確認すると 牛乳石鹸も含まれていました。共用のせっけんを使わなくなると 手が赤くなる症状は出なくなりました。
解説   :当初だれもせっけんが原因でアレルギー症状が出るとは思っていなかったので 同じ症状を繰り返していました。食物アレルギーのおこさんは、原因食品を食べる以外に触ったり吸入することによっても症状が出る恐れがあることを 保育士は知っておく必要があります。
対策   :園で共用のせっけんを家庭から持ち寄ってもらう際は、食品成分が含まれていないものにしましょう。

事例10:延長保育の時間におやつを食べて
年齢・性別:1歳男児
原因   :卵を使用したプリン
症状   :蕁麻疹
経過   :延長保育の時間におやつが出ました。担任の先生は食物アレルギーについて理解していましたが、その時は別の先生が担当していました。担任でない先生は児の卵アレルギーのことを聞いておらず、卵を使用したプリンをおやつで与えてしまい、食べた直後から児に全身蕁麻疹が出ました。
解説   :掲示板には食物アレルギー児の情報が記載されていましたが、直接担当の先生に伝達がなく、掲示板の確認を怠ったため 原因入りのおやつを渡してしまいました。
対策   :食物アレルギーのことを掲示板に記載するだけでなく、直接しっかりと伝達すること。また、配膳トレーに原因アレルゲンを記載したカードを載せることも配膳間違いを防ぎます。食物アレルギー児のエプロンにアレルギー情報を大きく記載するのもよい方法と考えられます。

事例11:託児所は万全のアレルギー対応と思っていたら・・・
年齢・性別:2歳女児
原因   :他人のお弁当
症状   :蕁麻疹、咳、喘鳴
経過   :母親が子育てセミナーに出席するため 主催者側が用意した託児所に預けた時、他人のお弁当に入っていた卵焼きを食べてアレルギー症状を起こしました。蕁麻疹、咳、喘鳴まで生じ、救急病院で点滴となりました。
解説   :悪事所のルールとしましては、「具なしおにぎり、お茶のみ」であったにもかかわらず、ルールを守らない出席者がいたため起こったと考えられます。
対策   :託児所に食物アレルギーのおこさんを預けるときは、主催者側に伝えておく必要があります。「具なしおにぎり、おちゃのみ」というルールのみで食物アレルギー対応であると判断はできません。託児所ルールを守らない人もいるので 誤食事故が起こらないように主催者側もしっかり目を配る必要があります。

事例12:おかあさんがオムレツを見落として
年齢・性別:7歳女児
原因   :学校給食のオムレツ
症状   :蕁麻疹、皮膚のかゆみ、口唇・口腔の違和感
経過   :学校食のオムレツを1口食べてしまいました。5分以内に 蕁麻疹、皮膚のかゆみ、口唇・口腔のピリピリ感があり、本人がすぐに吐き出して口の中を洗ったため大事には至りませんでした。
解説   :卵アレルギーがあるため 給食のメニューで卵料理が出る場合は、母親が代替食を持参することになっていましたが、母親がメニューを見落とし、代替食を持たせなかったため 本人は配膳されたためめ食べてしまいました。担任の先生も この児の食物アレルギーに対して理解が不十分で 給食内容も母親任せで注意を払っていませんでした。
対策   :誤食事故を防ぐには、二重、三重のチェックが必要です。給食対応は母親任せではなく、学校全体で食物アレルギー児を把握し、注意しなければなりません。

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